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はじめに
理学療法ってなんでしょうか?理学療法の専門家である理学療法士ってどんな職業でしょうか?
決して「リハビリの先生」ではないと思ってますが、悲しいかな世間一般ではリハビリの先生ですよねぇ。
これ、臨床実習に来る学生、まだ経験の浅いセラピストも答えられない人が多いです。
理学療法士の資格をとるための学校にいき、理学療法士の国家資格を持ちながらよくわかっていない人が多いってちょっと寂しい。。とってもやりがいがって、素晴らしい職業だからこそ知ってほしいです!
理学療法とは

まず日本における「理学療法」とは、法律でどのように定義されているのか見てみましょう。
身体に障害のある者に対し、主としてその 基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
理学療法士及び作業療法士法
続いて、日本理学療法士協会の理学療法の説明。少し表現を変えて次のように説明しています。
理学療法とは病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。
日本理学療法士協会
それそれポイントを抜き出してみます。
法律のポイント
【対象】「障害のある者」
【目的】「基本的動作能力の回復」
【手段】「治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加える」
理学療法士協会説明のポイント
【対象】「病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々」
【目的】「運動機能の維持・改善」
【手段】「運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いる」
【特記】「治療法です」
法律と協会説明にはかなり表現の違いがありますが、(この言葉選びや最後の「特記」の部分などは、この文章を考えた方々の意図や苦労が垣間見える気がして勝手に「お疲れさまです!ありがとうございます!」と思ってます。)
簡潔に言うと、理学療法とは、
”物理的手段を用いる治療法”
ってことですよね。そうです。治療法です。
温める、冷やす、運動、マッサージなんて何千年も前からある、最も古い治療法の一つですよね。
特に日本ではこの物理的手段を用いる”理学療法”(日本では理学療法と呼びますが、英語でPhysical Therapy. 直訳では物理療法で良いと思うんですが、やんごとなき方々があえて”理学”という名前をつけた意図がどのようなものか。これまた気になるものです。)が、”外科”や”内科”に押されてしまっていますが、本来は外科や内科と並ぶ”治療”の大きな柱であり、手術をしたり薬物を使用せずに低リスクで”治療”をすることができる素晴らしい治療法の一つなんです。
理学療法士とは

これも日本の法律にはこう定義されています。
「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。
理学療法士及び作業療法士法
です。ただし、理学療法士として理学療法を行うには、医師の指示の下でしかできません。”名称独占”職種です。でもこれ”業務独占”ではないので、理学療法資格のない人が理学療法を行うこともできます。
なんなら、
理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。
理学療法士及び作業療法士法
とありますので、看護師さんの独占業務である”診療の補助”、その診療の補助の一部として理学療法士なら理学療法やってもいいよ!っていうのが現在地です。
本来なら外科、内科と並ぶ治療の柱の一つだと思うのですが、理学療法士及び作業療法士法のあり方、日本の理学療法士資格取得のハードルやプロセスを考えると、内科や外科と並ぶ治療法と認識されて、理学療法が業務独占となることからは遠ざかってしまっています。。
理学療法士法及び作業療法士法は昭和40年に公布されたものなので、当時はどのような事情があって、このような法律になったのか詳しくはわかりませんが、今となってはこうしたほうが、ああしたほうがというようなところもあり、理学療法士協会の説明文はその辺りを意識して説明を変化させているのかな?と感じます。一般の方にはわからない絶妙な変換w でもこれ結構重要だと思います。
この辺りの、詳しい対比、言葉選びに関して話し出すと長くなっちゃうのでまた別件で書きます。(誰が興味あんねんw)
リハビリテーションとは

ではリハビリテーションってなんでしょう?みなさん”rehabilitation”を和訳できますか?
rehabilitation = リハビリテーション、社会復帰、復位、復権、名誉回復、復興、再建
Weblio英和辞書
はい。そうです、”rehabilitation”は日本語でそのまま「リハビリテーション」です。
はっきりとした和訳がないんです。ですが本来は、社会復帰、復位、復権、名誉回復、復興、再建というような意味があって、そういった概念がむしろ大切なんです。
当時の日本では、”rehabiritation”という言葉をなぜ日本語にしなかったんでしょう。”rehabilitation”が持つ広く深い大きな意味を、端的にあらわすことが困難だったからでしょうか。
「リハビリテーション」と音訳するに留まった件に関して興味深いお話があります。
1969年の第4回日本理学療法士学会でWHO日本政府顧問であったバーバラ・ナッシュさんが「どこに行く日本のリハビリテーション」という題目で特別公演をされたらしいですが、日本では”rehabilitation”が日本語に翻訳されず、単なる機能回復訓練など狭い意味で用いられてしまっており、本来の意味が社会に広がらないであろうと警鐘を鳴らしたそうです。
”バーバラ・ナッシュの警鐘”(勝手に命名)から50年以上経った今、日本では「リハビリテーション」は危惧されていたようにガラパゴス進化を遂げています。
例えば、スポーツ選手が大きなケガや手術をして、復帰を目指して一生懸命にトレーニングをしている様子などがメディアで「現在リハビリ中の◯◯選手」と紹介があったり、「頑張ってリハビリして早く復帰したいです」なんてコメントしているところを見たことがないでしょうか。
そして理学療法士ですら「リハビリをしましょう」「今日もリハビリ頑張りましょう」など、「リハビリ」という単語を乱用しています。
本来”rehabilitation”は、医療用語ではなく、失われた地位・身分の回復、犯罪者の社会復帰、更生など、人間が持つ権利や資格、名誉の回復などの意味で使われてきた言葉です。ですが日本で使われる「リハビリ」という略語は、完全に機能訓練、トレーニングなどと同義語として扱われてしまっています。
言葉は時代によって意味や使われ方が変化するのも頷けますが、「リハビリ」という略語は完全に誤った形で市民権を得てしまいました。恐るべしバーバラ・ナッシュ。
リハビリテーションの和訳、本来の意味
では、リハビリテーションを日本語に翻訳するならば、どんな言葉になるでしょう。
「リハビリテーション」とは障害のある人の「全人間的復権」、すなわち、障害(生活機能低下)のために、人間らしく生きることが困難になった人の、「人間らしく生きる権利の回復」である。
DINF 障害保健福祉研究情報システム 総合リハビリテーションの新生-当事者中心の「全人間的復権」をめざして
日本のリハビリテーション史において欠かすことができない上田敏先生の「全人間的復権」という言葉がよくいわれます。平たく言うと「人間らしく生きる権利の回復」ですか。
この辺りは僕ごときが語ることも恐れ多いのですが、おっしゃる通りだなぁと思います。当たり前だった日常が、病気やケガ、高齢などによって失われて、当たり前が当たり前じゃなくなってしまう。失った人にしかわからない、とてつもない喪失。
そんな大きな喪失に対して、基本的動作能力の改善、物理的手段を用いる治療法である理学療法だけで、太刀打ちできるでしょうか?
「リハビリテーション」の範囲はとても広大で、その大きな枠組みの中の一つである医学的リハビリテーションのさらに中にある小さな「理学療法」という治療のみでは、とても「リハビリテーション」全体を網羅することはできません。
リハビリテーションに携わる理学療法士
理学療法士は、人間らしく生きる権利を失った方に対して、その方自身が”リハビリテーション”していくことを、理学療法をもってお手伝いすることが仕事だと思うのです。
私がよく実習生さんにする話があります。
病気で寝たきりになった患者さんがいます。その患者さんは自身で体を動かすことも、コミュニケーションをとることもできず、いつも目をつぶっていてこちらの声が聞こえているのかどうかもわかりません。
あなたはこの方に対して、どのような接し方、声掛けの仕方をしますか?と問います。
聞こえているかもわからないし、返事もないですが、挨拶はしますか?
何かこちらが行動を起こす時に、声掛けや説明をしますか?
(疾患、バイタル、リハオーダー有無など詳細はさておき)体を起こして桜の木が見える窓の外を見せますか?
ほぼ100%の人が、そうすべきだと思うと言います。
じゃあ、なんで?なんで聞こえていないかもしれない、理解できていないかもしれないのに、見えていないかもしれないのに、挨拶や説明、きれいに咲いた桜の木を見てもらうんですか?聞こえていないならいわなくても良いのでは?と問うと、多くの実習生さんは返答に困ってしまいます。
その解答として正しいのかどうかわかりませんが、私は”現段階”では次のようにお伝えしています。
「それはこの方が私達と同じ人間だからです。そして私たちはこの方のリハビリテーション(全人間的復権、人間らしく生きる権利の回復)のお手伝いをする急先鋒だからです」と。
さいごに
理学療法とは、理学療法士とは、そしてリハビリテーションとはと、今の自分なりにまとめてみました。
そもそも理学療法、理学療法士ってなに、リハビリテーションという言葉が持つ真の意味というのが、世間一般にも、これから理学療法士を目指す人、学生さん、若手セラピストに知ってもらいたいところです。
勉強不足で、まだまだ知らないこと、感じていないこともたくさんあるので、ここに書いたことと違う意見や考えを数年後にはもっているかもしれませんが、曲がりなりにも理学療法士として生きてきたものの一つの解答としては意味があるのかなと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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